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「えっと。つまり…バックダンサーになって大翔さんの金魚の糞になれば、教えてくれるってことですか?」
「アハハ!綾瀬ちゃんにとってはそうなるな。」
会社を辞めてだって?
…これは、人生の中で重大決断と言ってもいいだろう。
カメラは習いたい。
でも、長野さんや編集長には、もっと習いたいことがある。
「何も、ずっとバックダンサーでいろって訳じゃない。そこまで俺に習いたいと思えるほどの価値があるのか、吟味して行動しろと言ってるんだ。
決断すれば、俺はカメラもダンスも容赦なく指導するよ。」
…容赦なく…
有難い。是非してもらいたい。
人に感動を与えられる写真家になりたい?
答えはyes。
「そうだ。メモ用紙とペンある?」
「……はぁ…ありますけど…」
「さすが。雑誌の取材カメラマン。」
にっこり笑ってメモとペンを手に取る大翔。
「ほい。これ、俺の携帯番号ね。気が向いたら電話して?」
「…はい?」
「じゃなかった。本気になったら電話して?」
「……………」
そして大翔は、私の耳元に顔を近付けてこう言った。
「本気じゃないやつには、教える気はない。時間の無駄。
俺だって、カメラのことを全部知ってる訳じゃないから弟子なんておこがましいけど。
あんたよりは知ってるぞ?
……さぁ。どうする?」
「………!!」
…ち…挑戦状ーー!!
「じゃあ、俺はもう行かなきゃ。仕事が入ってるんだ。
気長に待つから、決断したらいつでもどうぞ。いつの日かまた会えたらいいな。」
フッ…と笑って、またサングラスをした大翔は、夜の闇に消えていった。
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