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「今日も1日お疲れさん。乾杯。」
「「乾杯」」
仕事が終わって21時過ぎ。
近くの居酒屋で編集長と長野さんと3人、ビアジョッキを合わせる。
……なんだ?この構図。
そして、座ってる位置に違和感を感じる。
テーブルの向こう側、編集長と長野さん二人で座り、私と対面している。
「綾瀬、好きなものを頼んでいいぞ。何食いたい?」
「え。編集長からお先に。」
「俺は何でも食えるから、お前が選べ。」
「じゃあ、シーフードサラダと軟骨唐揚げとエビマヨとホッケと……」
「お前、居酒屋好きだろ?」
「大好きです。」
「酒なんか大して飲めないくせに。」
「おつまみの方がメインですからね。」
二人はクスクス笑って、私がどんどん注文していく姿を見守っていた。
どうしてかは分からない。
でも、ただならぬ雰囲気を感じ取っていた私には、何となく分かった。
入社したての頃、長野さんはよくこうやって飲みに連れ出してくれていた。
右も左も分からない私を、雑誌記者カメラマンとして、その膨大な知識の中から根気よく教えてくれた。
そのうち、編集長が合流して、雑誌というものの素晴らしさや、人が目に焼き付けたい写真の撮り方を教えてくれた。
…でも。
多分。
今日が最後になる。
そんな雰囲気だ。
どうして?
それは分からない。
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