6686人が本棚に入れています
本棚に追加
/535ページ
あのときの思いを、高揚感を、すべて理解してくれるかは分からない。
だって、それはきっと、カメラマン独自の視点でしか見れないものだから。
「最初は、何も言われず、自分一人でいつものように撮りました。
その後、指導されながらの撮影。
帰社して直ぐに現像しました。
見て直ぐに思ったのが、自分とはまるで違う。
彼らの言う通りにしながら撮った写真は、初めに自分で撮ったものと比べて、雲泥の差でした。
そこで気付きました。彼らはカメラを辞めた訳じゃないって。今でもカメラを愛してて、毎日のように触れてるって。
それに気付いたら、彼らの傍で、術を磨きたいと思いました。」
編集長も長野さんも、黙って私の話に耳を傾けてくれた。
私が真剣に話すものだから、彼らも真剣に聞いてくれる。それが、殊の外嬉しくて。
「先週、偶然大翔さんにお会いしたんです。それで、弟子にして欲しいと頼みました。」
「大翔に直接!?」
「はい。大翔さんは、弟子を取るような大したモノは持ってないと仰いましたが。私の気持ちを汲んでくれて、了解を得ました。
でも、条件があると。」
「条件?」
「はい。」
「どんなものだい?」
「会社を辞めて、事務所に所属して、バックダンサーになれと。」
「ハハハ!!大翔らしい!」
大笑いした長野さん。
彼らとは同じ職場だったわけだから、性格まで全てを知り尽くしていることだろう。
最初のコメントを投稿しよう!