6686人が本棚に入れています
本棚に追加
/535ページ
「編集長、一言だけ言ってもいいですか?」
「どうぞ。」
「綾瀬、お前に大翔の傍でカメラを習うなんて無理だ。やめておけ。」
「……え……」
思いもよらない長野さんの言葉は、私の心を突き破った。
「そんなんで迷うくらいなら、初めから本気じゃないだろう。俺がまた教えてやる。俺の傍で働いてればいい。」
「教えてもらいたいのは山ほどありますよ!でも、大翔の写真は凄いんです!海斗も!」
「俺が一番知ってるよ。でも、お前には無理だ。」
「どうしてですか!」
「カメラへの愛情が足りないからだ。」
「……愛情……?」
「出版社にいるだけじゃ、カメラマンとしての才能は開花出来るものか!
単独でモデルを撮っても、なかなか上達出来ない。
そんなときに舞い込んだオイシイ話があるのに、飛び込めずに迷っている。
それでカメラが好きだと?ふざけるのも大概にしろ!」
バァァァン!
机を叩いて怒りを露にした長野さんの行動に、身体がビクッとなった。
「胸くそ悪い。編集長、俺は失礼しますよ。」
長野さんは万券を置いて、居酒屋から出ていってしまった。
あんなに風に怒る長野さんを見るのは初めてで。
声も出せず、反論もできず、ただ、呆然と出入り口のドアを見ることしかできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!