鼓動

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長野さんがあんな怒り方をしたので、自分が思った以上に動揺している。 ドクドクと脈打っているのが分かる。 「……綾瀬。大丈夫か?」 「…え?…あ…」 「長野なりの激励だからな。気にするな。」 「……!!」 激励!?…つまり…? 「不器用な奴だからな。アイツは。 綾瀬、大翔の許に行けば、自分が成長できると思うか?勿論、カメラマンとして。」 「…できると思います。」 「しっかりした根拠があるもんな。」 編集長は、フフッと笑いながら残りのビールを一気に飲み干した。 「お前はな、俺や長野から見たら子供のようなもんだ。手をかけて育てていく。それが楽しみでならないんだよ。」 「私も、一緒に仕事をしていると楽しいです!」 「お前の働きぶりを見ていれば分かるよ。でもな、カメラマンとして頑張っていけても、写真を極めることは出来ないんだ。 つまり、簡単に言うと、写真家にはなれない。」 「……………」 それは気付いていた。 私が常日頃から撮りたいと願うものからはかけ離れている世界。 それでも私は…… 「お前は飛び立とうとしている鳥だ。俺や長野が羽根をもぎ取ってしまうことは出来ない。」 「編集長!待ってください!」 「綾瀬。お前が誰よりもカメラを好きで、写真を好きで、俺たちが好きなことを知ってるよ。 その理由も。全部知ってる。 だから、ここから羽ばたいて、写真家という目標を突き進んでみる時期だと思うぞ?」 編集長も長野さんも。 『行ってこい』って背中を押してくれている。
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