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「籠の中の鳥になっちゃダメだ。自分を広げてみろ。俺は好きで出版社に入社した。でも、お前は違う。
俺が惚れ込んで、こういう写真を撮れる奴がうちにいたら、どれだけみんなが雑誌を見てくれるか。そう思ってたんだ。
実際、お前の撮った写真は、人の目を惹いて、万人も知らずと受け入れてくれてる。
自信をもって行ってこい。応援してるから。」
編集長は、優しく、柔らかく笑って。
「挫折したり、辛くなったり。そういうことがあるかもしれない。
その時は、俺を訪ねてこい。出版社に戻れるように、居場所は確保しておくから。」
「……………」
言葉など出てこなかった。
編集長と長野さんの思いが、ここまで自分の心に浸透していったことも初めてで。
「綾瀬。決断しろ。」
「…はい。」
「大翔の所に行くか?」
「…………はい。」
「よし!頑張ってこい!」
頭がグチャグチャになるくらい撫でられて、その衝撃で涙が溢れ落ちた。
見ると、編集長も涙目で。
「あー。クソ。歳を取ると、涙脆くて敵わんわ!」
「……ありがとうございました!」
正座して向き直り、頭を下げてお礼を言う。
「バカ。やめろ。俺はお前のことを見守るつもりでいるからな!しつこく電話するし、飲みにも誘うからな!」
「はい!」
本当に父親みたいな編集長。
長野さんも。
私は、二人から愛されてたと実感できる。
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