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レジで会計をしてるとき、
「あの女、本当に使えない。海斗のこと好きなくせに。」
そんな声が聞こえてきた。
あの女とは、多分私のこと。
…どこをどう見たら、私が海斗を好きって結論になるんだろうか?
最後の最後まで、頭のイタイ人だな。
本気で人間不信になりそうだし。
芸能界ってひとくくりにしちゃいけないのかもしれないけど、ちょっと怖さを感じる。
これから、片足くらいは突っ込まなきゃいけない世界。
(これもすべて、カメラのためだ。)
カメラのためなら、たとえ蕀の道だろうが、そこを意地でも踏み潰してやる。
長野さんや、編集長の思いを無駄にすることはしない。
新幹線で東京まで帰り、部屋に着くとカメラを取り出して外へ出た。
すっかり暗くなった空。
次々と色を変えては、綺麗なアーチを描く公園の噴水にピントを合わせ、写真を撮っていく。
大きな木。
小さな花。
質感のよいベンチ。
目にするもの全てが被写体になる。
明日、段ボールが届けば、DVDをずっと見る生活が待っている。
少しでもカメラに触れていたい。
少しでもいい写真を撮りたい。
これからの生活に、大きな不安と小さな希望が入り雑じり、写真を撮ることで落ち着きを取り戻す。
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