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「ねー。綾瀬ちゃん。」
「何ですか?」
「何があったの?」
「その前に、そのツンツンをやめてください。」
あれから大翔に電話して、時間を約束した。
その時間通りに事務所へ行くと、玄関で大翔が待っていてくれた。
そこに、偶然エレベーターから降りてきた海斗。
「おはようございます。」
社会人として、礼儀は尽くさなければと思い、挨拶だけはしっかりやるが、それ以外目を合わせることも会話することもせず、
「大翔さん。私はこれからどうすれば?」
と、大翔に逃げた。
大翔の楽屋で、事務所との契約書を書くことになり、現在に至る。
海斗とのピリピリモードを感じ取った大翔は、私の頬を人差し指でツンツンして、その理由を聞こうとちょっかい出していた。
昨日言われた。あの言葉。
私は、徹底するつもりでいた。
もう、うんざり。
他人の色恋沙汰に巻き込まれるのはごめんだ。
…元はと言えば、自分が撒いた種だけど、どう考えても、私は、この二人からここまで言われる筋合いはない。
「綾瀬ちゃーん?」
「少々バトルしました。それだけです。」
「チームメイトなんだからさー、仲良くいこうよ。」
「仲良くはできませんが、私が大翔さんや海斗さんを尊敬していることに変わりはありませんから。
海斗さんはやりにくいかも知れませんが、私は大丈夫ですよ。」
「…海斗の場合、人前だとアレだから別にいいけどさ。さすがに綾瀬ちゃんは許されないからね?」
「…と、言いますと?」
「もし、ステージに立つことになれば、バックダンサーは笑顔だから。常に。」
「そんなことは平気です。営業スマイルは、誰より上手いですよ。…書き終わりました。」
「ならいいけど。じゃ、ちょっとここで待っててくれる?」
「分かりました。」
そう言って大翔は楽屋を出ていった。
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