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海斗をそのままに、帰宅していつものようにカメラを手入れした後、雨が降っていたため、先にシャワーを浴びて、それから現像に入る。
「……………ッッ!!!」
ドクン!!ドクン!!
現像された写真を見て鼓動が速くなる。
「……………」
バックライトに照らされた海斗。
愛しくもあり、憎くもある。
自分を自嘲しているかのようにうっすら笑いながらも、今にも泣き出しそうな。
そんな複雑な表情。
オレンジに輝くベンツのフォグランプが、海斗の切ない表情を際立たせていて。
小雨が海斗の代わりに泣いているかのようで。
「……なに……コレ……」
本当に写真なんだろうか?
そう思うくらい、今までで一番の仕上がり。
カメラ1つで、ここまでのものが撮れるんだ。
スクープなのに。
私は、その写真を加納のところへ持っていくことは出来なかった。
海斗の切ない思いを売れない。
それから二人の破局報道がメディアで流れたのは、その3日後だった。
直ぐに分かった。
海斗の手が離れた途端、直ぐに自分を売った売名行為。
あの女がやりそうなこと。
どれだけ海斗に守られていたかも知らないくせに。
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