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しばらくして、商売敵の切り捨てから生き延びた村は道路整備によって細々と暮らしていました。
そこへみすぼらしい男がやってきました。
車を押していた村人が男を迎えました。
「やあ兄弟。こんな村まで何の用だい?」
「いよう兄さん。ワシはこのあいだまで商売をしていたんだが失敗してしまって、困っているんだ。」
「じゃあ、町まで車を押すのを手伝ってもらおうか。」
男は車の後ろにつきました。そして車に載った食物を少しずつくすねて食べました。
村人はそれを見て見ぬ振りをしました。
町につく頃には生で食べられる売り物は無くなっていました。
残りの食べ物、工芸品などを売り払うと、村人は男を食事に誘いました。
「兄弟、お前は生食物をみんなたべてしまったな。」
男は一瞬息が止まった。
「ああ兄さん。すまねぇ、止めなきゃと思ったんだが美味くて止まらなかった。」
村人は男の肩をさすった。
「いいんだ兄弟、途中で動けなくなってもらっても困るからな。」
村人は野垂れ死んだ弟を思い出した。
「それより、お前、俺の村に住まないか。人手が足りず、家が余っているんだ。」
「そんな、ワシは人を食ったような人間だ。
兄さんみたいな良い人と一緒には暮らせねぇ。」
「心配するな。俺もそんな人間だ。」
男達はそれぞれ唾を飲んだ。
そして、みすぼらしい男は一目散に逃げ出した。
(蛇足)
道路を使って隣国が攻めて来たがある村で行方不明になった。
翌日、村人は鎧甲に刀剣を持って城まで車を押していった。
みすぼらしい男は昔は商売敵であり、村人は主を毒殺した使用人であった。
村人の弟は…みなまで語るまい。
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