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電車を降りて改札口をくぐって、
「……って、あたし送ったら先輩、今日この道2往復ですよ!?」
美穂のマンションはこの駅から学校を通り過ぎてその向こうにあるから。
「うん、そうだね」
「そうだねって、面倒じゃないですか? だから、ここからでも帰って」
「君と一緒で面倒なんて、一度も思ったことないよ」
「……」
本当に、彼はどうしていつもほしい欲しい言葉をさらりと言えてしまうんだろう?
「それにね、ずっと画面の向こう側にしか君を見れなかったから、こうして触れられるのが嬉しいんだ」
あたしも……。
そう言えたら、可愛い彼女なのに。
だけど、言えないのが美穂で、それを知ってるから凌はクスリと笑う。
「だからね、琢磨とバスケの約束なんてしなきゃ良かったとか後悔してたよ」
「……それ、明日言っちゃダメですよ?」
「そうだね、琢磨、拗ねちゃうかも」
クスクス笑う声すら艶っぽく聞こえてしまう。
繋いだ手が、熱い。
学校は通り過ぎて、この通りを向こうに行けば美穂の住むマンションだけど、その手前には公園があって――。
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