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その日の夜、彼から電話はあったのだけど。
「ちょっとごめんね、時間がなくて。今からホストファミリーの人がお土産買いに行くの付き合ってくれるなんていうから」
「……そう、ですか」
「あと、飛行機の便も決まったしそれはメールするから」
彼はいつもと変わらない。
「ねぇ、お土産は何が欲しい?」
その声は優しくていつだって心地よい。
「なんでも……」
だから聞けなくなってしまう。
「美穂? 何かあった?」
そう聞かれても素直に口にすることが出来ない。それは凌も知っているから、
「いいよ。帰って聞くから」
そう言って電話は切られてしまった。
切れたスマホを見つめてため息をひとつ。
その後すぐにメールが来て、それには帰国日と到着時間が書かれていた。
彼が帰ってくるのは、夏休み初日。
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