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真桜を抱いたあと、俺の腕の中で目を覚ました真桜に俺は言った。
「真桜…明日からは俺はいつもの優しい栄兄さんだ。だから俺のこと無視したりしないで……。」
「…はい……。」
そう答える真桜の額にキスをして、俺は真桜を強く強く抱きしめた。
真桜、本当は総に君を渡したくなんてない。
真桜を抱いたら少しは気が済むと思ってたけど、もっと君が欲しくなった。
前よりも真桜が愛しいと……この心も体も俺だけのものにしたいと思ってしまう……。
でもそれは俺のわがままだ……。
俺は真桜のくれる温もりを感じながら、何かを断ち切るようにそっと瞳を閉じた。
すると真桜が俺に話しかけてきた。
「…栄太郎……」
「何?」
「…愛してる……」
俺は思わず目を見開いた。
「『栄太郎』は今日だけだから言ってもいいよね……。明日からは『栄兄さん』だから……。」
「…真桜、もう一回言って。」
俺は真桜の瞳を見つめた。
「…愛してるよ、栄太郎…愛してる……」
「っ……。」
嬉しくて俺は泣きそうになった。
でも……
「真桜、俺はもう君に『愛してる』と言ってやれない。その役目は総の仕事だ。」
「…うん、分かってる。ただ私が栄太郎を確かに『愛してた』って言葉に残しておきたくて…それで言ったの。だからもう満足……。」
「真桜、ちょっといい?」
俺は真桜の首筋に唇でキスマークをつけた。
「真桜、君の首筋にキスマークをつけておいたから…その跡が消えるまでは俺のこと想っていて……。」
「その跡が消えたら、そしたら総のものになってもいいから。」
真桜は悲しそうに頷いた。
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