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その日の夜、安いビジネスホテルの一室。
「真桜、家にちゃんと連絡した?」
「うん。」
「俺も。父さんに連絡しておいた。捜索願いでも出されたりしたら大変だからね。」
真桜はヘッドに座り下を向いて泣き出した。
「栄太郎……ごめんね。私、栄太郎からすべて奪っちゃった……。」
俺は真桜の隣に座って言った。
「一番大切なものは奪われなかったからいいんだよ。」
「一番大切なもの?」
俺は真桜を抱きしめた。
「そう、ここにいる……。もう離さない……。」
俺はそのまま真桜を押し倒す。
「真桜、いい?」
「…うん。私が栄太郎にあげられるものは全部あげる……。」
それを聞いた俺は笑って真桜のまぶたに口づけをした。
「……久しぶりに真桜に会ったから自分を抑えられないかもしれない。優しくできなかったらごめん。」
「いいよ。栄太郎になら何をされても平気……。」
まったく真桜は何でそんな可愛いこと言うかな……。
そんなこと言われると、俺も男だから加減ができなくなる……。
「これからは俺のことだけ見つめていて。真桜さえいれば俺はこの先さびしくはないから……。」
「うん。」
「愛してるよ……真桜。」
そう言って俺は真桜を抱いた。
何も持たずに駆け落ちしたけど、もう真桜と離れないでいいと思うと不思議と怖くはなかった。
寒い部屋で二人お互いを暖めあった。
―――――――
―――――
―――
…栄太郎……私、今すごく幸せだよ……。
私も栄太郎のこと愛してる……。
迎えに来てくれてありがとう。
その日、私は栄太郎の腕の中で眠りについた。
これからはここが私の居場所……。
栄太郎、もう私を離さないでね……。
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