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家の中に入って、リビングのソファーに座り、さっきの彼女のことを考えていると栄俊がコーヒーを持ってきた。
「父さん、仕事お疲れ様。」
「ああ…悪いな。…栄俊……お前いいのか?」
「何が?」
「……お前、好きなんだろう?真桜ちゃんのこと……。」
「父さん!!!」
「いや……変なことを聞いた……すまん、言葉のあやだ。」
「…真桜ちゃんは総のものだよ。俺のじゃない。」
「………。」
「……小さい頃、俺がお前の誕生日に何か欲しいものはないかと聞くと、お前は必ず総の欲しがっているものを言ってきた……。自分の欲しいものは言わずに……。」
「そしてそれをプレゼントするとすぐに『もう飽きたから総にあげる』と言って総に譲ってたな……。」
「……そうだったっけ……。」
「ああ、そうだった……。」
「そんなお前が愛しくもあり悲しくも思えた……。」
「栄俊、本当に欲しいものがあるなら我慢はするな。少しは自分が幸せになることも考えろ。」
俺は栄俊にそう言った。
栄俊はただ悲しそうに笑うだけだった。
そしてそれから約4ヶ月後に突然栄俊からきた電話が、これからは彼女と二人で生きていくという駆け落ちの知らせだった。
あの冷静で、いつも家族を優先に考える栄俊が駆け落ちをするなんて、よほどのことだろう……。
でも……
「やっと想いが叶ったか……。」
「幸せになれ、栄俊……。総のことは俺に任せろ……。」
そう呟いて俺は二階にいる総を呼ぶ。
「総!!大切な話がある。下りてこい!!」
栄俊、俺にできることはすべてやってやる。今まであげられなかったプレゼントを今度こそお前に贈ろう……。
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