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山口県萩市 とある町の住宅地
「……太郎……栄太郎……起きて……。」
あ…真桜が呼んでる、起きなくちゃ……。
俺はゆっくり目を開けて真桜が目の前にいることを確認すると、手を伸ばし真桜をベットの中に引きずり込む。
「おはよう、真桜……いつものやつして……。」
「……それ、しなきゃだめ?」
「うん……してくれないと目が覚めない。」
すると恥ずかしそうに真桜は俺の額にキスをする。
本当は唇にしてほしいって言ったんだけど、毎日は恥ずかしいから額で許してと言われた。
「栄太郎、おはよう。朝食の用意できてるから早く着替えてきて……。」
「わかった。もう少し真桜のことこのまま抱きしめていたいけどすぐ行くよ。」
俺はそう言って抱きしめていた真桜の体を離す。
真桜が部屋から出て行って、ひとり着がえをして身支度を整えているとキッチンの方から朝食のいい匂いがしてきた。
「……こういうの悪くないな……。」
6年前までは俺が家族の食事を毎日作っていたから、誰かが自分のために食事を作ってくれるのは俺にとってすごく幸せなことだ。
掃除も洗濯もそう、真桜はそういうささやかな幸せを毎日俺にくれる。
俺はキッチンに行き、テーブルに用意されているできたての朝食を真桜と一緒に食べた。
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