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「ごちそうさま。じゃあいってきます、真桜。」
「いってらっしゃい。」
真桜がいつものように俺を玄関まで見送ってくれる。
俺は今この町で私立の高校の教師をしている。
「パパ~、いってらっしゃい。」
「早く帰ってきてね~。」
真桜の後ろから一足先に朝食を食べてリビングで遊んでいた子どもたちがひょっこり顔を出す。
「ああ、早く帰るよ。2人とも、ママをあんまり困らせるんじゃないぞ。」
「「は~い!!」」
「真桜、ちょっと……。」
幸せそうに子どもたちを見つめる真桜の手を引いて俺は真桜にキスをする。
「あ~、パパまたママにきすしてる~。」
「らぶらぶだ~!!」
「もう、栄人、真菜、あまり大人をからかわないで……。」
「ママ、顔真っ赤だよ~。」
「かわいい~。」
「ああ、ママはかわいい。世界一かわいい。」
子どもたちにからかわれて頬を染める真桜が愛しくて俺は真桜を抱き寄せる。
そして真桜の耳元で囁く。
「真桜、もうひとりくらい作ろうか?今夜は寝かせないから覚悟しておいて。」
「えっ」
「ふっ、いってきます。」
耳まで赤くなる真桜の頭をそっと撫でて俺は玄関のドアを開ける。
「ママ、今パパ、ママに何て言ったの?」
「知りた~い。」
「ひ、秘密。」
そんな真桜と子供たちの会話を聞きながら、俺はいつものように仕事へ出かける。
今日の放課後の職員会議さっさと終わらせて早く帰ろう……。
栄人と真菜とたくさん遊んであげてから真桜のこと思う存分……ね。
よし、今日もがんばるか。
真桜みたいにキラキラしている朝日が俺を照らしていた。
―稔麿編:現代―完―
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