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―警視庁―
今日、栄俊が嫁と子ども達を連れて東京に遊びに来る。
栄俊は毎年二度、総には内緒で俺に会いにやってくる。
もちろん実家には泊まらないが……。総は以前は荒れていたが今ではだいぶ落ち着いた。でも栄俊の話は家では禁句になっている。
それでも栄俊はいつも総の誕生日には何か贈り物を送ってくる。
やはり小さな頃から面倒をみていた総のことは、かわいいんだろう。
「藤本、この事件の資料まとめておけ。」
「はい!早瀬警部!!」
俺は部下に仕事を命じたあと、自分の席につき、別の事件の資料を見ていた。
「早瀬警部!ご家族の方がお見えになっています!」
呼ばれた方向に目をやると、そこには栄俊の嫁が立っていた。
俺は思わず席を立ち上がった。
「なぜここに来ている。栄俊と子ども達はどうした?」
「先にホテルに行ってます。大勢で来ても迷惑になると思って……私はこれを届けに寄りました。」
そこには風呂敷に包まれた四角いものがあった。
「……何だこれは……。」
「お弁当です。部下の皆さんの分も作ってきました。はじめさん絶対バランスのいい食事とってないと思って。」
「……そのはじめさんという呼び方止めてくれないか。」
「だめですか?昔はそう呼んでたのに……。私、はじめさんの名前を栄俊さんから教えてもらったとき、すぐに気づいたんですよ。あのはじめさんだって。」
「何を言っている……お前の言っている意味がさっぱり分からない。」
「じゃあヒント出します。この風呂敷を見てください。」
その風呂敷を見ると黒地の布に牡丹の花があしらわれていた。
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