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「牡丹か……。」
「はい。……はじめさん、この花嫌いですか?」
彼女が不安げに聞いてくる。
「……嫌いではない……。」
むしろ昔から好きな花だ。誰にも言ったことはないが……。
「よかった……。」
彼女は嬉しそうに笑う。
「警部、その綺麗な人、早瀬警部の新しい奥さんですか?」
「ば、馬鹿なこと言うな!!」
全く空気の読めない新人の刑事が俺に言ってきた言葉に俺は怒鳴った。
「けど、警部のこと下の名前で呼ぶなんて……。」
「うちの息子の嫁だ!!」
すると彼女がにっこり笑ってその刑事に挨拶をしる。
「どうも、いつもはじめさんがお世話になっています。これ、お弁当ですけど皆さんでどうぞ!」
「お弁当だって!!」
「俺もらう。ちょうど腹減ってたんだ~!」
みんながわぁっと集まってくる。
「……だからはじめさんと呼ぶのはやめろ……誤解をうむ……。」
「ふふっ、はじめさんははじめさんですもん。あっ、いつも言ってますけど私のことは呼び捨てにしてくださいね。真桜って呼んでください。」
「………。」
真桜か……。とても懐かしい響きだ。何故だろう。
俺は少し微笑んだ。
『見たかよ。早瀬警部が笑ってる顔、初めて見た。』
『天然記念物ものだぞ。』
『私、難しい顔してる警部しか見たことないのに……あの子本当に息子さんのお嫁さんなの?ウソなんじゃないの?』
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