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「はじめさん、これ……。」
「何だ……?」
「手作りの御守りです。刑事のお仕事って危険なことが多いから……。」
その御守りの柄も黒地の布に牡丹の花のついたものだった。
俺は黙ってその御守りを受け取った。
最近、正直困っている。
この子が俺の心の領域にどんどん入ってくるから。
俺に御守りを渡すと彼女は満足そうな顔をする。
「じゃあ、私、行きますね。」
「真桜、待て……。」
「……今、真桜って……。」
「お前がそう呼べと言った……。」
「仕事、すぐ片づけるから一緒に栄俊のところに行こう。栄俊にそう連絡しておけ。」
「…はい!はじめさん。」
「時間がかかってもずっと待ってます。もう勝手に消えたりしませんから。」
「何だ、それは……。」
俺はそう言ってまた笑った。
理由なんて分からないが、俺は牡丹の花が咲いたように綺麗に笑うこの子がかわいくてしかたがなかった。
カシャ カシャ カシャ
「ん?」
振り向くと俺の部下がみんなケータイをこっちに向けていた。
「早瀬警部の笑った顔撮った!!」
「俺も!!」
「私も!!」
次の日、警視庁中にその写真が回ったのは言うまでもない。
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