俺は3万円で売られた

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 少し前に、ここへ来たばかりのトイという少年が養成所を脱出しようとして、殺された。  ここは監獄みたいなところだ――とグラはよく言っていた。  同じ養成所に連れてこられた哀れな仲間と監督以外、誰とも会えないからだ。  それに、少年兵の部屋は全部牢屋のような作りになっている。鍵も毎晩かけられるし、出ようとしても見張りのヤツに見つかる。  確かに監獄のようだ。まぁ、囚人服なんて趣味の悪い服は着せられないからありがたいけど。 「…おめでとう、ってなんだよ」  俺が言うと、監督はニヤッと笑った。 「実はね、領主のアルベルト・デラクール侯爵から君に、言伝(コトヅテ)を預かっている」  こ、言伝?  俺は監督の言葉に拍子抜けた。
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