Part 1

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「いい被写体だ」  朔也は、え、と言う風に首を傾げ、隣を歩いている友人のピエールの視線の先を追った。 「Japoneだろ?」  ピエールはそう言って両手を前に出し、指をL字型に組んでみせ小さな枠を作った。  焦点を合わせるように、その指の間を覗いている。  朔也はその枠の向こうに見える人影に目を凝らしてみた。  その中に、少女がいる。  腰まである長い髪、少し上を向いて瞳を閉じている白い横顔、それらがこの夏の暑い日差しを受けてキラキラと反射していた。  周囲の喧騒からかけ離れて、そこだけがポッカリと他の空間を作っているようで、軽爽とした静かさがあった。  不意に、その静寂が破られたかのように、その少女が瞳を開ける。  その少女の前に三人の男が近づき、取り囲むようにして前に立ちはだかっていた。  その中の一人が少女の肩を掴み、何か怒鳴り出す。  パチン―――、と少女が肩に乗っている手を払いのけ、険しい表情で何かを言い返した。 「―――何か様子が変だ。ここで、待っていてくれないか?」  朔也はピエールを振り返った。 「おてやわらかに」  その朔也に軽く視線を投げて、ピエールは軽く肩をすくめてみせた。  朔也はそれに小さく笑い返し、タッと少女の方に駆け出した。
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