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透き通るほどにきれいなエメラルドの瞳が、何の感情も表してなく、冷たささえ感じる無表情の色を浮かべている。
「ルイ・ミサキです。初めまして」
その青年は軽く眉を上げるようにした。
「フランス語が話せる?」
「ごく、基礎的なことだけ」
「それはいい。サーヤのことはもう知っている?」
「いいえ」
「紹介が、まだか。僕が先に終えてしまった、というわけだな。彼は、サクヤ・カヅキ。
僕の友人で、パリ大学の学生だ。サクヤと呼びづらいから、サーヤと呼んでいる。―――これで、正しいかな?」
ピエールは横にいる青年をチラリと見る。
サーヤと呼ばれた青年は小さく苦笑いをし、
「それ以上、付け加えることはないだろうね」
ピエールは浅く笑い、瑠哀に向き直る。
「ルイ、昼食は済んだの?」
「いいえ、まだです」
「僕達もまだなんだ。ちょうど、どこかで昼を取るつもりだったから、君も一緒にどう?ここで立ち話をするのも落ち着かない」
「ありがとうございます。でも―――」
瑠哀は躊躇した。初対面の人間について行くことに戸惑いがあった。
「警戒する必要はない。君を救けたことに恩をきせて、悪さしようとは思っていない。ただのランチだ。逃げたくなったら、いつでも逃げていい」
ピエールの目はついて来るように促していた。
救けてもらっておきながら、悪党呼ばわりするのも礼儀を欠かしている。
それで、瑠哀は仕方なく軽く息をついて、
「ご一緒させてもらっても、いいですか?」
「もちろんだ」
ピエールはスタスタと歩き出した。
カヅキが瑠哀を見て、行こう、と促すのに頷いて、瑠哀はピエールの後を追うように歩き出した。
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