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つい先日の話である。
これはそう、極々身近に潜むものだけれど、あってはならないとても恐ろしい話だ。
そんなことが昨日俺の身に降りかかったのだと改めて考えると、未だに身体が震えてしまう。まさか自分の身にこんなことが起ころうとは、想像することすらも出来なかった。
さて、それでは頭を整理するために順を追って思い返してみよう。
先日俺は無性に甘い物が食べたくなり、俺の昔からの知り合い御用達のケーキ屋に行ったのだ。
そして奮発して、何だか長ったらしい名前の少し高いケーキを買った。
別に俺は特に甘い物が好きなわけではないけれど――というか、一部のものは苦手でさえあるのだけれど――なぜか食べたくなるときがあるのだ。実に不思議な限りである。
まあそんな、どうでもいい俺の好き嫌いの話は置いておくとして。
俺はそのケーキ屋で、自分の分とあともうひとつ。家にいる〝おてんば少女〟にも値の張るケーキを買って帰った。
その気前の良い、優しさの塊のような行為が嘲笑われる、不幸な出来事が起こるとも知らずに。
帰宅後、夕飯時になって〝おてんば少女〟にそのケーキを与えてやった。
そりゃあもう大喜びだったさ。俺と違って甘い物が大好きな〝おてんば少女〟は、かつて無いほどの恍惚の表情でケーキを食べ切った。
そして食べ終わるなり気持ち悪いほどに丁寧な言葉遣いで俺にお礼を言う少女。俺は笑いながらその言葉を受け流してやった。
こうしてその日の夜は何事もなく楽しく終わったのだ。
……そのときの俺は、そう信じ切っていた。
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