復讐

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  問題なのはその日の夜だった。 俺が呑気に風呂に入っている時、不意に寒気が俺を襲う。第六感というやつだろうか。 とにかく悪い予感に焦燥感を感じながら早めに風呂を出た。 すると案の定、ソレは起こっていたのである。 そう。御察しの通り、おてんば少女が俺の分のケーキを食べていたのだ。 烈火の如く怒った。そりゃあもう、半年分くらいの怒りのエネルギーを全て消費する勢いで怒り狂った。 絶対に許せない。龍の逆鱗に右ストレートをぶち込むような行為である。 傍から見れば、高校生男子が幼気な少女相手に何を本気になっているのかと言いたくなるだろうが、そういう問題ではない。 俺は春休み最後の一日を飾ろうと残り少ない小遣いを叩いて、普段見せないような優しさを見せ、ついでに珍しく生じた俺の甘味への欲求を満たそうとした。 その三つを非情にも踏みにじった少女は紛れも無く、俺達健全なる青少年の敵なのだ。 それをなぜ許せることが出来るだろうか。いいや出来ない。 こうして悪戯少女と激情に蝕まれた俺の追いかけっこが始まった。屋外にまで発展したそれは数時間のデッドヒートののち、意外にもすばしっこい少女の勝利に終わった。 ケーキ片手に逃げ回る子供を追いかける俺の姿はさぞかし滑稽だっただろう。 俺は敗北の悔しさと惨めさを噛み締めながらシャワーで汗を流した。そして怒りを抑えつつも、いつもより遅く床についたのだった。 深夜まで激しく運動していたため、当然あまり眠れはしなかったが。  
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