50人が本棚に入れています
本棚に追加
そうこうしているうちに学校に到着した。必要以上に装飾された荘厳な校門が俺達を出迎える。
【霧ヶ咲第一魔法魔術高等学校】
門の脇にはそう刻まれている。
〝霧ヶ咲第一高校〟とか〝霧咲一高〟とか呼称が色々あるので忘れがちだが、これがこの学校の正式名称だ。
俺達は今日からここの二年生になる。
一応〝名門〟と銘打たれる学校なので、入学する前は授業に着いていけるかどうか心配だったけれど、大半の者が難無く無事進学出来たようだ。
かく言う俺達も――俺はともかく結衣の方は確実に――優等生と言える部類なので、勉強に苦労したことはなかった。
もちろん、この学校の教育課程における主流、〝魔法学〟の面でもそれは同じだった。
「うわっ、あと五分しかないよ」
携帯電話で時刻を確認した結衣は俺の腕を引っ掴み、焦るように促す。
「ここまで来ればもうゆっくり歩いても間に合うんじゃねえの?」
「駄目! 自分の教室を捜さないといけないんだから!」
そう言って結衣は俺の腕を引っ掴み、校庭へと駆け出した。
俺の記憶によると教室のドアに各クラスの名簿が貼り付けてあるらしい。つまり、全部で十二クラスある教室を一通り周って自分の所属クラスを探さなければならないのだ。
「そんなに急がなくても間に合うって」
「駄目だよっ! ほら、グズグズしない!」
そう言われながらも既に引っ張られているので、結構(結衣の走る速さを考慮した上で)精一杯走ってはいるのだが。
春休みをぐうたらと過ごしたツケがこんなところに出るとは思わなかった。
いくら運動が得意でも、運動不足というのは中々に辛いものだ。これは明日には筋肉痛になっているかもしれない。
そんなことをぼんやり思いながら俺は校舎の中へ入っていった。
最初のコメントを投稿しよう!