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「ミナトさん。何なんですか?あからさまな、話合わせろというあの目配せは。」
呆れた表情で見やると、湊はニコリと笑みを浮かべる。
「すみません。助かりました、話合わせてもらえて。」
「それで、何か狙いでもあるんですか?」
「あります。まぁ、簡単に言えばあぶり出しですよ。」
「あぶり出し?まさか、にぃ様あの中に黒幕がいるとでも言いたいんですか?」
その言葉にいち早く反応を示した綾は、湊に首を傾げながら問う。
それに湊は首を横に振ると静かに口を開いた。
「大丈夫、あの中にはいないよ。それよりも…。」
湊はそこまで言って言葉を飲み込むと、自身の左隣からの視線に目を見開いて硬まった。
「それ…より…も?」
「えっー…と…アスナ様は何をしていらっしゃるんですか?」
「ん…?皆を…見送って…来た。」
左様でございますか。
「アスナは帰らないのか?」
「アスナ…は…明日…帰る。ダメ…なの?」
目を潤ませての上目遣いとは…やるなアスナたん。
「是非よろしくお願いしますッ!」
「にぃ様…?」
おぉふ…綾たん威圧しないで。これは仕方ないんだよ。幼女女神のパワーの前では俺なんかただの…ロリだもの。
「さーせん。とりあえず話を戻すと、それよりもあの封筒だ。」
「No.…1の?」
「あぁ、それだ。行方不明の封筒に人魔界戦争…。そして、リオネルの他に存在するかもしれない黒幕。もしかしたら、俺たちはその黒幕のシナリオ通りに手の平で踊らされてんのかもしんねぇな。」
アスナの頭を撫でながら表情を硬くして湊は手を下ろす。
かもじゃねぇな…間違いねぇ。それに俺の予想が正しければ…。
「ミナトさん。どうしてそう思うんですか?」
ティノは手を上げて疑問を投げる。
「なんちゃってな。」
取って付けた笑みを浮かべて、その場をやり過ごす為にふざけた振る舞いを見せる湊。
ティノも綾も首を傾げながら目を丸くする。しかし、アスナだけは湊の表情をジッと見つめたまま口を噤んだ。
「まぁ、遅かれ早かれ黒幕が居るなら動くだろう。それまでは、いつも通りやるだけだ。ふぁ~。悪いけど話はこれで終わりな。夕飯になったら呼んでくれ。少し寝てくる。」
一方的に話を切り上げて湊は背を向けて応接室を出て行った。一筋の深い皺を額に浮かべながら。
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