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「ミナト…。」
「アスナちゃんどうかしたの?」
綾はアスナと同じ目線にしゃがみ込むと手を握る。
「綾ねぇ…ミナト…の…ところ…行ってきても…良い?」
「にぃ様のとこ?」
「ん…ミナト…何か…変だった…。」
変…?
「どんな風にか分かる?」
「何て…言えば良いか…分からない。でも…嫌な感じ。行って…くるね。」
それだけ告げてアスナはとことこと歩き出す。
応接室に残されたティノと綾は、アスナの背中を見送って互いに向き合う形でソファに腰を下ろした。
「綾ちゃん。」
紅茶を一口啜り、ため息交じりに名前を呼ぶとティノは眉根を下げて綾を見つめた。
「はい。」
「戦争になるかもしれません。ミナトさんはそうなったら人間界を潰す、そう言ってましたけど、本当にそんなことするつもりがあると思いますか?」
「いえ…あれは本気と見せかけた挑発だと思います。」
「偽りの挑発ですか…。それを聞いた彼女たち勇者が、どう出るのか待つしかありませんね…。」
「まぁ、にぃ様がどうにかしますよ。あぁ、見えてもやる時はやる男ですから。」
言い終えた後に薄く笑う綾を見てティノも小さく笑みを浮かべる。
「それもそうですね。ミナトさんは何だかんだで強いですから。デタラメだけど。」
「それが、にぃ様を愛して止まない良い所なんですよ。」
勝ち誇った笑みを浮かべて言ってのける綾に対して、ティノは内心で「ブラコンめ」と思うのであった。
所変わって、湊捜索隊隊長女神幼女アスナは湊の部屋の扉の前に立ち、部屋の前で行ったり来たりを繰り返していた。
んー、ミナトに何て声を掛ければ良いのかな?「アスナ…ミナトと…寝るの。」…ダメだ。ミナトの鼻血が止まらなくなっちゃう。鼻の下がビヨーンってしちゃう。
んーーーー。おぉッ!?
良い事思い付いたの。これなら、ミナトも元気になるの。
何かの覚悟を決めたアスナは、意を決して湊の部屋の扉を開けた。真っ暗な部屋のベッドに膨らみが廊下の光で確認できた。
「ミナト…?」
「………zzz。」
…寝てた。
開けた扉を素早く閉めて中に入ると、ベッドサイドへ近付いて行き間接照明を点ける。
「ミナト…?」
名を呼びながら間接照明で露わになった湊の顔を突つくアスナ。
「…ん……zzz。」
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