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消えた…まだ青年になるかならないかくはいの男。
見た目から想像も出来ない魔力と強さ。あの勇者であるアイリス様さえも倒した。しかも、回復魔法まで使って治療する辺り、アイツはそんなに悪いヤツには見えなかった。
気を失った仲間とアイリス様に顔を向ける。アイツが言ったようにアイリス様は寝息を立てて眠っているだけだった。
それからしばらくして、遠征に行っていた第二騎士団と第三騎士団の面々が帰って来て、事態収拾の為に関係各位に報告書をあげて慌ただしい一日が終わった。
次の日、アイリス様に呼ばれた。
扉をノックして部屋に入るとアイリス様は椅子に座って外を眺めていた。
「第一騎士団副隊長ラウル。只今、報告に参りました」
その声にアイリスはゆっくりと振り返る。
「昨日は大変でお疲れなのに申し訳ありません。あの後のことを教えてもらえますか?」
「昨日の一件。アイリス様が気を失った後、あの男が自分を起こし後始末は任せると言って姿を消しました」
「そうですか…。私に回復魔法をかけたのは誰か分かりますか?」
アイツには黙っておけと言われてる。
「医療班だと思われますが。何か気になることでも?」
「えぇ。気を失った後、夢を見たんです」
「夢…ですか?」
「一人の少年が女の子を助ける夢です」
「その女の子と少年はどうなったんですか?」
「助かりましたよ。でも、少年は亡くなってしまいました。女の子を助けたのを引き換えに…とても悲しい夢です」
「その夢がどうかされたんですか?」
「あの男の子は湊さんだったように思えます。そして、彼は前に一度死んでいます」
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