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京の甘味処に一人の男がいた。
その男、この時代にしては珍しい、肩につかないぐらいの髪。
そしてなにより、目立っているのは髪色だ。
その男の髪色は白だったのだ。
「ふぅ……暑い日だなぁ」
その男はそう呟くと、みたらし団子を頬張った。
そして、モグモグと口を動かして食べ終わると、串を皿の上においた。
「娘さん。御代、此処に置いとくよ。」
店の中で慌ただしく動く、娘に声をかけると、その娘は頬を赤らめて元気よく言った。
「またおいでやすっ!」
「ごちそーさま。」
娘の言葉に片手を挙げて、ニコリと笑うその男。
その男の容姿はとても整っている。
目は二重の切れ長で澄んでいる。
高い鼻、薄い唇、白だが艶のある髪。
一歩間違えれば、女と間違えられるかもしれない。
それくらい美しく整っていた。
その容姿にくいついてくる女はたくさんいるが、その女の心もわかっていない。
つまり、鈍感なのだ。
自分の容姿が怖いぐらい整っているなど思ってはいない。
だから、さっきの娘が顔を赤めていたのも、風邪かな?ぐらいで終わらせている。
罪な男だ。
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