久しぶりの再開

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男は咄嗟に庇いにいこうとしたが、途中で止まった。 そして、口角をあげ、またその場を見守ることにした。 キィンっ! 刀と刀がぶつかり合う音がした。 「くっ!誰だ貴様!!」 怒鳴りあげる浪人の前にいたのは、笠を深くかぶって、黒く背中まである髪を無造作に流している男だった。 その男は刀を抜いて、浪人の刀を止めていた。 「誰だと聞かれて名乗るわけがなかろう。貴様のような者が侍を語る資格などない。」 その声に、傍観していた男は、あり?と、また呟く。 (どっかできーたことあるような……) そして、考えておるうちに、汚い浪人は気絶していた。 「あらら。終わっちゃった。」 暇だから、見物してたのに。 見るものもなくなったし、またブラブラしようかと思い、人だかりに背を向けると、後ろから名前を呼ばれた。 「おい、朔(さく)。お前、京にいたのか。」 その声の主は、先程、浪人と対峙して女と子供を助けた男だった。 朔は何故、自分の名前を知っているのか不思議に思い、振り向くと、 「久しぶりだな、朔。」 「……え?ヅラ!?」 笠を少しあげて、顔が見えた。 その顔は切れ長の目、通った鼻筋、形のよい唇。 朔に負けないぐらい、顔が整っている。 「ヅラじゃない、桂だぁあ!!」 その男は、桂だった。 しかし、桂が大声で自分の名前を叫んだから、周りにいた人たちは、ザワザワと騒ぎだした。 その様子に、桂はハッとして朔に言った。 「いかん!敵襲だ!!逃げるぞ、朔!!」 桂は朔の服の袖を引っ張り走っていく。 「わっ、わゎっ!」 いきなりすぎて、足がもつれそうになる朔。 (まず、俺は追われてる身じゃないし!しかも、ヅラも今のは追われてるんじゃなくて、正体がバレただけだろ!) 逃げる意味がない。 朔はそう言おうとしても、前を走る桂が必死すぎて、速さが尋常じゃない。 息があがり、言おうとしても言えない状況だった。
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