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「朔……」
“あの日"とは何か気になるが、聞いてはいけないような気がして桂は何も言えない。
「てことだから、大丈夫。今はただの一般人だよ。」
もう話をもとに戻したくないのか、朔はふわりと笑って話を変えた。
「そうか。ならば、俺たちに力をかしてはくれぬか?」
桂がそう聞くが、朔は呆れたようにため息をついて、こう言った。
「……言ったでしょ?俺は二度と人を斬らないって。ほら、見てよ。これでどうやって、手伝えってゆうのさ?」
朔は腰にさしてある、刀……ではなく、木刀を取り、自分の前に置いた。
「……人斬りじゃなくなりたいがために、松陰先生の仇までとらぬというのか?」
桂は朔を睨みながら、低く冷たい声で言う。
「桂……。そんなことしても、松陰先生は戻ってこないよ。その事は俺がいちばんよく知ってる……。人を斬っても誰も報われない。」
悲しげに木刀を見つめながら、言った朔は、そろそろ失礼するよ。と、障子に向かって足を進める。
そして、障子に手をかけた瞬間、
ドサッドサッ
「うぉおお!?」
「うわぁっ!」
「いたたた。」
「いったー……。」
人間団子ができた。
どうやら、盗み聞きをしていたらしく、開けたと同時に全員前に倒れてしまったらしい。
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