第一章

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ずっと、1人だと思っていた。 自分自身で、それを寂しいとか悲しいとか感じる事は無かった。 否。本当はワザと毎日忙しいフリをして寂しさを紛らわしていただけなのかもしれない。 そうしないと、孤独で壊れてしまいそうだったから。 両親を失って…一人になって…表面上だけの友達を作って… 学生時代は、勉強と部活で時間を潰し、卒業してそれなりの企業に就職して仕事に没頭した。 ずっとこのまま死ぬまでこういう人生を送るんだと思ってた。 面白くなくても、皆が笑っている時に合わせて笑った。 笑うフリをした。 誰だって、どんな人間だって抱え込んでいる孤独の一つや二つはあるものだし、そこに漬け込むのも漬け込まれるのも嫌だった。 誰かに知ってもらっても、理解されることは一生ないと思ったから。 そんな時に現れた人。 上司の大脇優さん。 「幡野さん、君はいつも頑張ってるね。ありがとう。君の姿を見て沢山の後輩たちが励まされてるよ。でも、たまには肩の力を抜くことも大切だよ。大丈夫だよ。少しくらい肩の力を抜いても。だって、君はもう十分過ぎるほど頑張ってるんだから」 そんな言葉で、心の隙間にあった穴を埋める事ができた。 今まで苦しんで来た。 だからもう… 幸せになっても、いいよね?
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