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「絶対幸せにするから」
今現在が、人生で一番幸せなのに、これ以上幸せになるのかと思うと怖くなった。
少し見つめあった後、優しくキスをされて銀色の指輪を渡された。
彼の掌にある銀色の指輪を見つめながら、自分の顔がへにゃりと緩んだのが分かった。
嬉しくて、嬉しくて、幸せで、これが全て夢なんじゃないかと思ってしまった私は、自分の右頬を強く摘まんだ。
「いひゃい…」
右頬には、確かに強い痛みがあってこれが夢でないことを教えてくれた。
「何やってるの?」
彼は少し不思議そうに顔をキョトンとしていて、それがなんだか可愛らしくて、またへにゃりと笑ってしまう。
「幸せすぎて、全部夢なんじゃないかと思って」
そう伝えると、彼は声に出して笑った後、私を抱きしめてくれた。
いつも通りの優しい太陽の匂いがして安心する。
「こら、匂いばかり嗅ぐなよ」
「えへへ。だって太陽のいい匂いがするんだもん」
すんすん、とさらに匂いを嗅ごうとすると、彼に離されてしまう。
太陽のいい匂いと、彼の暖かい温もりを失って少し残念そうにしていると、首筋に再び温もりを感じる。
一瞬何が起こったのか分からなかったが、よく見てみると自分の首筋に彼が顔を埋めていめくすぐったい。
「あんまり煽るなよ」
小さな声で呟いた言葉が聞こえて、耳まで熱くなっていく。
耳の下あたりに生暖かい感触がして思わず声をあげてしまう。
「ひゃっ!」
耳の下を舐められる生暖かい感触は何とも言えない。
俯いて目を閉じて我慢していると、上から笑い声が聞こえる。
恐る恐る目を開けてみると、彼が口を押さえながら笑っていた。
「かわいいなぁ…もう」
愛でるように目つめ、優しい表情をしている彼の方が可愛い…だなんて口が裂けても言えない。
お互いに照れながら見つめ合い、もう一度笑った。
「愛してるよ」
「うん。私も愛してる」
月明かりが二人を照らし、まるで祝福しているかのようだった。
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