第一章

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着いた先は、毎年冬になると訪れていたお墓だった。 彼が何をしようとしているのか、何と無く察した私は黙って後を着いて行く。 暫く歩いて行くと、彼はある場所で足を止める。 そこには大きな文字で幡野家と彫られたお墓がある。 私の両親のお墓だ。 高校生の時に2人は飛行機事故で帰らぬ人となった。 彼は、両親のお墓の前に座り込み手を合わせて、目をつむる。 そしてゆっくりと話し始めた。 「お義父さん、お義母さん。この度、希実さんと結婚させていただくことになったので、報告に来ました」 優は合わせていた手を一度離し、私の肩を抱き寄せて続けた。 「希実さんと2人でこれから一生歩んで行くので、どうか見守っていてください」 彼の言葉で、ふ…と昔の記憶が蘇る。 両親が生きていた頃の記憶。 いつも優しく見守ってくれて、困った時には助けてくれて。 悲しい時には、一緒に悲しんでくれて。 嬉しいときには、一緒に喜んでくれて。 寂しいときには、抱きしめてくれる。 今でもちゃんとおぼえてる。両親の温もり。 そして、両親のお陰で私は素敵な男性とも巡り合えた。 だから、産んでくれてありがとう。 お父さん、お母さん。 「希実さんを産んでくれてありがとうございました」 自分が思っていた事を、誰かが代わりに口にした。 それは、いつも聞いている彼の声。 「希実さんと一緒にいられて、俺は幸せです」 肩を抱き寄せていた手を離し、今度は手を握る。 一度目があって、彼が優しく笑いかける。 「一度、結婚す前に挨拶に来ようと思ってたんだ」 私の両親が亡くなったことを知った日も、ただ抱きしめて"頑張ったね"って言ってくれて… 私の事をいつも一番に考えてくれる優しい人。 だから… 「お父さん、お母さん。私、優と幸せになるね」 嬉しくて泣きそうになり、繋いでいた手に力を込めれば笑みが返ってくる。 大丈夫だよ。 もう、私は一人じゃなくなったから。
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