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会場を後にして車を向かわせたのは、俺達の自宅。七日後の会談までは一切行動しないと言う。
「お兄ちゃん、たぶんあっちこちから人が沢山来るから、日本に増員の指示出しておいてくれるかな」
「まあそりゃ……そうだろうな。わかった」
今俺たちがいるタチバナアイランド、ホテルに飲食店といった全ての施設、先ほどの会談を行った議事堂も、全て俺が代表を務めるタチバナコーポレーションの持ち物だ。むしろ島自体が持ち物なのだから当然と言えば当然。無論それらに関わる人員も全て。
葵がたったの十二年で築き上げた財を管理させられているだけではあるが。
「んで、人類が滅ぶってのはどういう意味なんだ?」
「言葉の通りだよ。正確に言えば人口が零になるわけではないと思うけど、九十九パーセント以上の人間は死んじゃうんじゃないかな。それでも文明が消滅するのは間違いないから、滅ぶって言ったんだけどね」
まるで遠足の予定でも語る様に、元々大きな瞳を細めにこにこと笑いながら答える葵。いったい、何がそんなに面白いんだ? 俺のような凡人には天才様の思考が理解出来ない。出来るはずもないし、したくもない。
「だからそれがなんでだって聞いてるんだよ」
「今はわからなくていいよ。七日後、次の会談でわかるから」
こいつが今ままでに一度だって言葉を覆した事がないのを、俺は一番よく知っている。誰よりも、その事を正しく理解している。葵が言わないと言うなら絶対に言わない。それこそ人類が滅んだって言わないのだ。
物心ついた時から変わらない。やると言ったらやる。我が妹ながら、恐ろしい程愚直に有言実行する。
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