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ひょっとしたら、一つだけでも父親としての役目を果たしたかったのかもしれない。
そう思うと切なかった。
結局、私は彼の希望通り……『凛』と名付けた。
ふあぁと眠気で大きな欠伸をすると、ふぁとつられて凛も大きな欠伸。
「フフフ……ほら、ねんねでしょ?」
凛の柔らかいほっぺをつんつんとする。
すると、凛は岸谷とそっくりな切れ長の瞳をパチパチと瞬きさせた。
凛はパパ似だなぁ…
岸谷の面影を見つけると、嬉しいけれど切なくて、ちょっとだけ泣きたくなる。
何度、彼に会いたいと思っただろう。
何度、この子を会わせたいと思っただろう。
岸谷と別々に生きる道。
この選択に、不安になることは度々ある。
子供に寂しい思いをさせるかもしれない。
シングルマザーとして辛い場面にも出くわすだろう。
だけど、後悔はしていない。
母として胸を張って生きてゆくための選択。
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