第五章 震える王都

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ネストリア連邦衛星国 サリビア王国 王国首都 ヘンザ 自衛軍戦闘地域 「しかし酷い戦場だ...」 佑都達が王都攻略戦の前線に送り込まれて丸一日。 ここまで敵を恐ろしいと思ったことはなかった。 佑都達は、大打撃を負った部隊の交代として投入された。 投入された場所は、王都内で最も死に近い激戦区、王宮前の皇帝広場だった。 自衛軍は、この国を支配するためには王族と王自身の拘束が必要と考えていた。 また、首都の最中心部である王宮を手中に治めることは、敵軍の士気低下や降伏、国の支配権を握る第一歩だと考えた。 そのため、王宮陥落は王都攻略作戦において最優先事項だった。 いままでのペースで作戦が進めば、王宮は一日立たずに陥落すると思われていた。 しかし、現実はそう簡単ではなかった。 王宮に入るには、遮蔽物の少ない皇帝広場、それに繋がる大きな道を進まなければならなかった。 先任の部隊は、どうにか広場にたどり着いたが、広場の3分の1地点で戦闘続行不可能な被害を食らい、撤退した。 そして現在、佑都達はちょうど同じ辺りにいるのだ。 遮蔽物の少ない広場は王宮から丸見えで、攻撃魔法や矢の格好の餌食だった。 その上、あまりの対空魔法攻撃の密度の高さにヘリによる航空支援は不可能だった。 「支援砲撃の後戦車と共に前進、一気に王宮まで到達する!」 井上が叫んだ。 これで5度目の攻撃か... 広場中央には、たくさんの敵味方の死体や負傷者が横たわっていた。 74式戦車が進み出す。 王宮に主砲を放つが、魔法により弾は反らされ王宮の周辺街に着弾した。 支援砲撃も同じで、すべての弾は不自然に軌道を反れ、明後日の方向へ飛んでいった。 「やはり砲撃は効かないか...」 歩兵隊は96式装輪装甲車に乗り前進した。 車内には絶え間なく衝撃が走る。 魔法が直撃しているのだ。 さらに、雨が降るかのように装甲に矢が当たる音がした。 しかし、広場中心に差し掛かると、攻撃が止まった。 ちょうど、前回の攻撃はここで失敗した。 「総員降車!!」 車両から隊員が降りる。 なぜ降りるのか、理由はすぐにわかった。 先頭を進む74式戦車が突然爆発し炎に包まれる。
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