第五章 震える王都

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サリビア首都 王宮地下道 「あとどのくらいで到着かね?」 サリビア王アレクセイは部下に尋ねた。 「もう間もなくです。脱出後、王宮守備隊が建物ごと爆破する手筈になっております。失敗しても、地下通路にはトラップがありますから」 「うむ。やむを得まい。」 「地表に出ましたら、今夜は近くの隠れ家で夜をやり過ごし、早朝出発、森を越えればネストリアです。」 「夜に森を越えることはできんのか?」 「不可能と思われます。夜の森は危険ですから」 自衛軍 仮設尋問室 「王はどこから逃げたんだね」 捕らえられた魔術師は無言を貫いていた。 「そろそろなにか話したらどうだ。悪いようにはしない。」 かれこれ2時間もこんな調子だ。 本来なら、時間をかけて聞き出す案件だが...王に逃げられては意味がないため、どうにか早く吐かせる必要があった。 「チッ どうせお前以外の魔術師はみんな死んじまったんだ。国も滅亡。今さら庇う必要なんざなかろう。」 「お前の仲間はみんな自爆して木っ端微塵だよなぁ。なのに貴様だけ生き残ってる。もういいじゃないか。これ以上裏切ったって大して変わらんだろ」 捕虜は尋問官に反抗的な目を向けてきた。 「それとな。お前を含め、王宮守備魔法化部隊には、兵士や軍属、一般市民の意思に関わらず特攻を無理矢理行わせた、として容疑が掛かってる。戦争犯罪人は裁判の後死刑される。ほとんど決定事項だ。」 「残念だったなぁ。せっかく生き残ったのに、死刑じゃなぁ...?どうだ?吐く気になったか?なぁ?」 そこに警務隊員が一人入ってきて、耳打ちした。 「こいつ、ただの魔法部隊員じゃないですね。ネストリアの内偵ですよ。」 「道理で...よし、アレ、使っちまえ。」 「はっ。」 王宮 皇帝広場 「我々はこれより、王宮周辺の残敵掃討を行う。弾が当たらない王宮は我が軍の拠点となる。奪われるわけにはいかないんでな。」 「了解」 「王様が逃げた地下通路は見つかったんですか?」 「見つかったらしい。なんでも、西館地下にかなり大きい地下空間があるとか...現在他部隊が調査中- 言葉が言い終わるよりも前に、突然地面が揺れ、辺りは光に包まれた。 咄嗟に地面に伏せる。 轟音と閃光で状況がまったくつかめない。 ただ、鉄帽や服に無数の小石が当たっていることは分かった。 どれ位たっただろうか。 徐々に視界が取り戻されていく。
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