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国境近くの村
隠れ家
辺りは既に日が落ち、薄暗くなっていた。
結局村人とは一度も出会わず、薄気味悪い雰囲気が部屋を覆っている。
妻も子供も怖がっているようだった。
「閣下。兵士を2人斥候に出しました。」
「そうか...」
こんな場所で一晩過ごさなければならないと思うだけで気が滅入った。
そのとき、外でなにか物音がした。
「お静かに!様子を見てきます。」
そういうと、部下の一人が外に出ようと扉を開けた。
その瞬間、彼の首から血飛沫が上がり、ドクドクと血が流れ出した。
「に...逃げて!」
なにかの叫び声が聞こえる。
他の兵士達が庇うように前にでた。
扉を開けた部下がその場に崩れ落ちる。
そして、奴らは部屋に入ってきたのだ...
奴ら...
人間の屍を素に作られる人工の醜い化け物。
もはや生き物ですらない。
その名はアンデッド。
文字通り、死から甦った亡者のことだ。
「何故こんなところにアンデッドが!?」
「糞!叩き斬ってやる!」
兵士がアンデッドの頭に剣を突き刺す。
「閣下、ここは危険です。脱出しましょう」
扉からは続々とアンデッドが入ってきていた。
兵士の一人はアンデッドの頭に剣を突き刺し、貫通した刃をさらに刺し、数体を串刺しにした。
「おらぁ!!ぶっ殺してやる!」
兵士が時間を稼いでいる間に窓を開け脱出する。
「閣下、これを」
そういって短刀を手渡された。
物音を立てたからだろうか、数えきれないほどのアンデッドが集まってきていた。
「ここにいてはまずい!閣下、とにかくお逃げを!」
その瞬間、部下の首にアンデッドの歯が食い込んだ。
彼は痙攣し、こと切れた。
生き残っているのはもう、妻子と自分だけになっていた。
走って近くの家に逃げ込む。
扉を家具で無理矢理押さえた。
扉に夢中で気がつかなかったが、この部屋には窓があった。
窓から奴らが入り込んできた。
恐怖で身がすくむ。
動けない。
おしまいだ...
アンデッドの顔が目の前までやってきた。
反射的に目を瞑る。
しかし
アンデッドに喰われることはなかった。
その代わり、目を開けると周囲には奇妙な集団が立っていた。
顔は黒い布で覆い、服装こそ異界の奴等と同じだが、目の部分はなにかで覆われ、さながら怪物のようだった。
「アレクセイ王ですね?あなたにはいくつかの容疑が掛けられています。」
そして、両手を捕まれ拘束された。
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