平坂 八重というモノ

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朝日が昇る方角を除いた三方向を山に囲まれた小さな集落。 そこに住む夫婦の間に生まれた女子、平坂 八重は最近、世界とか、おとぎ話に 異常な興味を示すようになった。 もともと彼女はそういった類のものはすべて迷信だと割り切ってしまう様な人間だっのに。 例えば部屋を暗くしてみて、辺りを見回してみたら、恐怖を覚える程にはっきりと、いるはずもない女性が居たとしよう。 そのあたりなら彼女は気のせいだと割り切るだろう。 コップが触れてもいないのに勝手に粉々になり出せば、たちまち彼女は狙撃されているのかとか、まだ根拠のはっきりしていそうな理由をつけて神秘を認めようとはしない。 認めたくない。 では、一体何が彼女をそのような状態に陥れたのかというと、それは二、三ヶ月ほど前の話しになってくる。 集落の北に位置する山は彼女の家系が代々受け継いでいる土地だった。数十年ほど前までは山の頂上に八重の祖祖母とその知り合いの一味が建てた、とても美しくおおきな城があったのだが、第二次世界大戦の爆撃の流れ玉で呆気なく陥落してしまった。 いまでは山に石垣が残る程度だが、それから推測するにもやはり城の規模はどでかいものだったようだ。
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