氷雪

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紫がかった白く暗い空から舞い降りるソレを見ていた。 全てを覆い、隠し、清めるように絶え間なく地に降る白いソレ。 否、覆い、隠し、清めようとしているのだろう、白とは対照的な緋を。 ソレの持つ清らかさとは正反対な数多の罪を犯してきた己を。 白を染める自らの緋。 己の生命の欠片が流れ地に落ちていく感覚と冷たさをただ感じていた。 痛感はすでになくなっており、その他の感覚もなくなりつつあった。身体に力が入らなくなり腕を上げるどころか、指を動かすこともままならない。瞼も次第に重くなっていく。 それと比例するように流れる緋も少なくなっていく。 緩やかに、しかし確実に死の影は近づいていた。 どのみち己に待つのは死だけであった。此度の任務は己にとって最後の仕事だった。幕府と朝廷の二重諜報、それが己に与えられた任務だった。 己は知りすぎてしまったのだ。水面下に渦巻いている陰謀を、謀略を、野心を。 幕府と朝廷にとって己は生きていてもらっては困る存在なのだ。
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