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ほとんどのクラスメイトは見送り後すぐに帰り、教室に残っているのは数人。
夏鈴は荷物をまとめて教室を出ると、軽い足取りで昇降口に向かった。
「あ、お金忘れた・・・」
下駄箱の中にある外履きに手を伸ばしかけたところで、机の上に電話代を忘れたことに気が付く。
毎日、公衆電話から母親に電話をかけて迎えを頼むために、常に数十円を持っているのだ。
急いで階段を駆け上がり教室に戻ると、
「どうしたの?」
夏鈴のすぐ後ろの席の彩子が、目をパッチリ開いて聞いてくる。
「電話代忘れちゃったんだっ」
笑いながらそう言って机の上に放置された十円玉を掴むと、教室のドアのほうへ向かった。
「夏鈴ちゃんバイバイ!!」
「ばいばーい!!」
彼女は背が小さく小柄で活発な子だ。
クラスメイトに話しかけられることが滅多になく
“嫌われているのではないか”
と常時不安な夏鈴にとって、彩子のひと声は救いだ。
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