最後の景色

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図書館に入ると、ヘアーカタログが置いてある一角へ足を運ぶ。 金曜日。そして正午過ぎに帰宅できたこの日、夏鈴は髪を切りに行く予定だったのだが、髪型はまだ決めていなかったのだ。 ピンとくる髪型が載っているヘアーカタログがあれば・・・と、この場所に来たのだが。 既に数冊目を通しているのに、ピンとくる髪型が無い。 パーマやワックスで動きをつけられたものばかりで、原形をとどめている髪型がほとんど無かったのだ。 なぜストレートヘアーのカタログは無いのだろう、と疑問に思いながら、手にしていたカタログを棚に戻すと図書館を後にした。 「あっそうだ、あそこに回っていっていい?」 陸橋を下りかけ、そのお店の看板が目に入ったところで母親に問いかけられる。 「うん、じゃあ車の中で待ってるね」 夏鈴は2月から買い始めた雑誌の3月号を手に取り、広告部分に載っている、自分好みのショートカットヘアの女性を探す。 彼女の髪型が切り札。 もし図書館にピンとくるカタログが無かった時の為、念のため家から持ってきていたのだ。 彼女は夏鈴より10歳以上も年上なのに、同年代と思わせるような顔立ちをしている。 もしかすると、髪型が好みというより、憧れるような顔立ちの女性の髪型を真似たいという気持ちのほうが大きいのかもしれない。
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