いち。

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長い間、色んな事を相談してきたけど、一つだけ言えなかったことがあるんだ。 自覚したのは、確か中学二年の秋だった。 それからずっと、言えなかったこと。 だって、怖かったの。 君と私の間にできたこの心地いい距離が、言ってしまったことで壊れるんじゃないかって。 修復不可能になったら、なんて考えるとどうにも足がすくんだ。 前に進めなかった。 そうしてズルズルここまできちゃった。 言えなくても、言わなくても良いかなって思ってたの。 このまま自分の中だけに思いを押し留めて、自然に風化するまで待つのもいいかなって。 でもね。 少しずつ、まるで瓶に水滴が溜まっていくみたいに長い時間をかけて溜まったこの想いを伝えるのも良いかなって、そう思ったんだよ。 画面に視線を落として、指を動かす。 『あのさ』 ぱっと音がして画面に新しく吹き出しが表示された。 でも、直接伝えるのなんて無理だから。 だから、こうやってケータイに頼っちゃうけど。 そのくらいは、許してほしいの。 自分勝手でごめんね。   『聞いてほしいことがあるんだけどさ。』 画面の吹き出しに入れた言葉に、ケータイを握りしめる。
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