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カモメ柄の浴衣なんて。
玄関先にあらわれた洋子を、唖然として出迎えた。
おろしたての開襟シャツを思わせる、白地の浴衣である。
糊がきいていて、凛とした彼女の佇まいによく合っている。
だが、何度見直しても絵柄は変わらない。
青いカモメたちは、洋子の足下から旋回し、二羽、三羽と群れ飛びながら、高く舞い上がった。
「ヘンな柄」
危うく口から零れそうになるのを飲みこんで、私は、精一杯の皮肉をこめて微笑んだ。
「かわいい浴衣だね」
ありがとう、と洋子ははにかんだ。
くしゃっと、きれいな顔がつぶれるのにもかまわずに笑う洋子を見て、私はますます暗い気持ちになる。
嫌な笑顔だ。
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