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クラスのだれよりも綺麗な顔立ちをしているくせに、彼女はけして、高嶺の花を気どらない。
だれとでも気さくに話し、容姿の差や違いなど、ないかのように思わせる。
それでも、手の届かない存在であることは明確なのだ。
くせのない長い黒髪。
テニスのラケットを振るしなやかな腕。
薄い花の模様のついた、レースの下着。
なにかにつけて洋子の真似をする、クラスのバカな女の子たちとは違う。
私はとっくに気がついていた。
洋子はカモメだった。
気まぐれにこちらと戯れることはあっても、同じように空を飛ぶことは出来ない。
凛と前を向き、向かい風を上昇気流に変えることの出来る翼を、彼女だけが持っている。
それは、生まれながらの美しさ。
幾たびもの進化のなかで計算され、洗練された美しさだった。
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