リンゴ飴

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 新しい浴衣がなんだというのか。    欲しければ、くれてやりたい。    私は歩きながら、自分の醜悪な浴衣姿を見下ろした。    頭から足の先まで着飾っているものを、一つ残らず脱ぎ捨ててしまいたくなる。    ――まるで振り袖ね。    祖母とともにデパートから帰ってきた私を一瞥するなり、母は切り捨てた。   祖母がいる手前、笑ってはいたが、流行に飛びついた軽薄な色合いや、派手な花柄を気に入っていないことは確実だった。  ――紫織ちゃん、せっかく綺麗に着付けしてもらったんだから、そのままで帰ったら。   そんな祖母のすすめに、軽々しく頷いてしまったことを悔やんでも、今さらだった。  ――デパートの店員さんって口が上手いのよ。アレコレ褒めちぎって、いらないものまで買わせようとするんだから。もったいない。やっぱり私もついて行ったらよかったわ。  祖母を駅まで送り届けてから、帰り道、母は改めて不満を漏らした。  そして、家に帰りつき、畳の上に脱いだ浴衣をひろげて、きちんとそれをたたみ終えるまで、私がいかに悪趣味で浅はかな買い物をしてしまったかを、とくとくと言い含めたのだ。  別にいいじゃない。
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