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[羽丘警察署 会議室]
人の出入りが激しい会議室の椅子に座るくたびれたスーツを着た男、羽丘署の警部である橘 慎吾(タチバナ ユウゴ)は、手元の捜査資料から目を上げて、正面のホワイトボードを見た。
そこには男女数名の顔写真が貼られ、その横には年齢や職業などが手書きで書かれている。それはヤクザに主婦に小学生まで、実にレパートリー豊かだ。
連日ニュースにも取り上げられ、羽丘市の住民なら、誰でも知っている有名な事件になってしまったこの”連続失踪事件”は、二ヶ月経った今でも、一切の進展を見せず、警察の評判を下げるのに十分な効力を発揮していた。
「タチバナさんこれって結局何も分からないってことっすよね」
隣には同じように捜査資料に目を通していたスーツ姿の若い男が座っていた。
最近この羽丘署に配属されて、この事件の担当になった刑事の一人だ。
名前はたしか、青木 俊哉(アオキ トシヤ)
「いや、アオキ、この失踪なにか不自然な気がしないか?」
「なんすかそれ、刑事のカンですか?新米のぼくなんかにそんなのわかるわけないじゃないですか~」
青木の軽い物言いに橘は顔をしかめた。
「あっ!そういえば面白い話聞いたんですけど、“鬼ごっこ”てウワサ知ってます?」
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