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病院からの帰り道。
月明かりに、流れる雲が照らされていた。
何か懐かしい記憶が甦りそうな、そんな気がした。
フラフラの体で家にたどり着く。
チカチカと銀色の光が飛んだかと思うと、直後激しい頭痛に襲われた。
耳閉感と目眩で立っていられない。
這うようにして、ベッドに潜り込む。
その夜、僕は夢を見た。
散り始めた桜の木の下を、女性と二人歩いている。
それが誰かはわからない。
白いワンピース、僕は軍服のようなものを着ている。
僕の肩に落ちた桜の花びらを、大事そうに拾いハンカチに挟む。
別れ際に、手紙と浴衣、それから小さな手作りの人形をもらった。
話は何一つしなかった。
何度も振り返って、そして大きく手を振る。
それが誰かはわからない。
けれど自然と涙が溢れた。
頬を伝うものにハッとして目が覚める。
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